粉塵爆発に関する文献は種々あるが、多くは全米防火協会(NEPA)の指針「Guide for Explosion Venting」NEPA No.68-2013、または欧州におけるATEX(防爆)指令 ATEX2014/34/EUを基準に爆発抑止システムや爆発放散システムを考える。例えば、放散孔面積を容器の容量から決定している方法が一般的である。
NEPAは種々の実験データーよりまとめられたもので、我々としては非常に算出しやすく、また、このデーターについては米国内の工場安全管理者にも高く評価されプラントに使用されている実例も多い。
この指針の『ベント開放圧力』では、「爆発中にベントを開くと圧力上昇を減ずる。ベントを開く圧力が小さければ小さいほど上昇圧力は小さくなる、容器内での通常運転での圧力の変化でベントが開いてしまう程度までは、開放圧力は小さくしないものの、ベント開放圧力は出来るだけ低くするべきである。(途中略)ベント機器はそれが開いたとき、人または機器に害を及ぼすものであってはならない。例えばベントパネルは適当な蝶番式にする。同時にベント中にできる大きな炎の固まりは人または機器に害を与えてはならない」また別項では「放散孔を設ける目的は容器に損害を与えるような圧力に発展する前に粉塵の燃焼物を放散することである。空気を含んだほとんどの粉塵密閉容器内の燃焼最大圧力は大気圧力下において、100psig(7barg, 0.7Mpag)に達する。面積当たりの低い質量を持ち、低圧力で開き、充分な面積をもった放散孔は発展する最大圧力をより少ない値に減少させることができる。(中途略)放散孔の設計において必要なベント面積は、①容器の容量 ②粉塵の程度 ③ベント開放圧力 ④着火エネルギー ⑤最大圧力 との関数となる」(1)。
図1が、このNEPAガイドラインに従い実施したABS用流動層乾燥機の爆発放散パネルである。これ以外にもサプレッションシステム、また窒素循環閉回路も構築されている。
図2は現在稼働しているABS乾燥のクローズシステム(本質安全)である。粉塵爆発に対する安全性向上と排ガス量削減という二つの目的で構築した。このプロセスで最も問題となるのが、循環ガス中に濃縮されていくVOC除去である。高濃度のVOC中で乾燥を行えば、当然その成分は製品中に多く残留してしまう。それを防ぐために循環ガス中のVOCを吸着、回収しなければいけない。しかし、その吸着設備コストは膨大である。安価なVOC回収システムの開発が急がれる。その技術が確立されれば、現在稼働している乾燥設備のクローズド化が急ピッチで進むことになるだろう。
(1)APPIE編:“実用 粉粒体プロセス技術”、粉体と工業社(1997)