
【コンテインメント】バグフィット
高活性物質や微粉末を扱う現場では、従来、頑丈な金属製のグローブボックス(アイソレータ)などの導入が一般的でした。しかし、これら高度な設備は数千万円規模に及ぶ多大な初期投資必要となるだけでなく、導入後の「運用コスト」が現場の大きな負担となっています。
特に深刻なのが、生産後の洗浄および「洗浄バリデーション」に要する時間と手間です。異なる製品を交互に生産するマルチパーパスプラントでは、製品の切り替えごとに「ウエットダウン(散水スプレーによる粉塵固定) ➔ 分解・洗浄 ➔ リンス・スワブサンプリングによる分析評価 ➔ 承認」といった極めて頑丈で煩雑な手順が発生し、多大なダウンタイムを引き起こしていました。
- 数千万円にのぼるアイソレータ等の高額な設備投資
- 生産終了後の長時間の洗浄・乾燥バリデーション作業
- マルチパーパス生産でのクロスコンタミ(交叉汚染)リスク
「バグフィット®(BAGFIT)」は、これらの課題を解決するために開発された、新しい設計思想の簡易コンテインメントシステムです。
高活性薬物やナノ粒子などのハンドリングが発生する製品回収口、サンプリング口、パーツ交換箇所などの「局所部分」のみを、グローブが一体となった透明な樹脂製(PVCまたはPE)のバッグで直接包み込みます。
作業員は、バッグの内側に設置されたグローブ越しに、外部への粉体の漏洩や作業員自身への曝露を防ぎながら、安全・精密に製品の回収やメンテナンス操作を行うことができます。さらに、バッグの内部を窒素ガスなどの不活性雰囲気で満たすことにより、製品の酸化防止や湿度管理などの雰囲気制御にも最適です。
- 必要最小限の封じ込めで、高度なクリーンルームを必要とせずに作業員の安全保護を達成します。
- 作業性やレイアウトに合わせて、現場でグローブ位置やバグイン・バグアウトポート(排出ポート)位置を柔軟に決定できます。
- オプションのスプレーノズルを取り付けて、バッグ内部をウエットダウン(散水スプレーによる粉塵固定)することが可能です。
- カフスやポートなどの構成パーツはすべてバッグから完全に分離・回収でき、必要に応じて個別交換が可能です。
バグフィット®と従来の固定式グローブボックスの違いは、初期導入コストだけに留まりません。生産後のプロセス設計そのものをドラスティックに変革し、劇的なコスト・工数削減をもたらします。
| 方式 | プロセス工程 | 洗浄確認 |
|---|---|---|
| 従来のグローブボックス | 生産 ➔ ウエットダウン ➔ 装置洗浄 ➔ リンス・スワブサンプリング ➔ 分析評価 | 必須(高負荷) |
| バグフィット®(使い捨て) | 生産 ➔ ウエットダウン ➔ バッグをそのまま廃棄 | 不要 |
※バグフィット®をシングルユース(使い捨て)として運用することで、面倒な洗浄バリデーションプログラムをスキップできます。
バッグを使い捨てる(シングルユース)運用にすることで、毎回行っていた煩雑な洗浄確認やサンプリング・分析の全プロセスをスキップでき、バリデーションプログラムの手間をゼロにできます。
製品やプロセスごとに毎回新しいクリーンなバッグを使用するため、残留原料による異なる製品同士の混入や交叉汚染リスクを完全に排除します。
装置全体の洗浄・乾燥にかかる時間を大幅に短縮(あるいは省略)できるため、製品切り替えに伴う装置の休止時間を短縮し、製造ラインの稼働率を最大化します。
バグフィット®は、すべての構成パーツが現場での位置合わせを想定し、簡単に取り付け・取り外しが可能な「着脱・分離式」モジュール設計となっています。バッグのフィルム面をパーツ同士で挟み込んでパチンと固定するだけで、高いシール性を維持します。
- ● バッグ(本体): 材質はPVC(ポリ塩化ビニル) または PE(ポリエチレン)より選択。PVC製バッグは、静電気による粉塵付着を防ぐ「帯電防止仕様」を選択することも可能です。
- ● グローブ&カフス: カフスAとカフスBでバッグ面をサンドイッチ構造でパチンと挟み込んで固定します。グローブ材質は作業性・耐薬品性に応じて CSM(クロロスルホン化ポリエチレン)、F-teron、Butyl から選定。カフスサイズ:カフス径 Φ160mm。
- ● バグイン・バグアウトポート(BIBOポート): 安全に製品や廃棄物の出し入れを行うための専用ポート(材質:HDPE または SUS / サイズ:Φ160mm ~ Φ550mm)。ポートAとBでバッグフィルムを挟み、ハサミなどで開孔して使用します。
- ● 吊りピース: バッグを天井や専用フレーム、サポートロッドからロープ等で吊り下げて自立させるための接続治具。
- ● 3Mフィルターピース: 吸排気時にバッグが膨張・収縮する際、内部の微粉末が外部に漏れ出すのを防ぐための、高性能捕集フィルター。
- ● バルブピース&スプレー(オプション): バッグ内に液体をスプレー噴霧して内部をウエットダウン(液化して粉塵飛散を抑制)させ、バッグ取外し時の粉塵飛散を防止。
主な納入事例
バグフィット®は「秤量」「反応」「ろ過」「乾燥」から粉砕プロセスまで、他社製・既設装置を問わず、あらゆる現場への設置実績があります。各プロセスのレイアウトに応じてアタッチメントを設計します。
高活性薬物等の精密秤量・小分け・サンプリング時の曝露対策
秤量器そのものをバッグ内に完全に格納。計量誤差を最小限に防ぐため、バッグの気密性を維持した状態で外部から電源を引き込める特殊な「秤量器電源供給ライン」の接続貫通ポートを標準設計。秤量時の発塵から操作員を完全に防護します。
投入プロセスにおけるピンポイント曝露防止と作業性の両立
反応釜上部の投入口ポート周辺を覆うため、作業台(ワークベンチ)を兼ねる専用の金属製マウントフレームをエンジニアリング設計。投入時の周辺への発塵を確実に抑え込み、操作員の安全を確保します。反応釜への種晶投入、遠心分離機からの製品排出、コニカルドライヤーへの投入・排出等、あらゆるプロセスに応用できます。
既存ろ過器の排出口にアダプターを介した接続
そのままでは樹脂製バッグの取り付けが難しい特殊形状の排出口に対し、専用の接続マウント(接続用アダプター)を個別設計・製作。既設装置に手を入れることなく、確実なバグフィット®の取り付けを可能にしました。
小型実験機器全体の被覆とユーティリティ接続の確立
PSL社製ガラス製ろ過乾燥機「GFD® Pilot」をバグフィット®でドーム状に丸ごと被覆。バッグの気密性を維持した状態で、不活性窒素ガス、温水、真空ホース、各種配管を安全に貫通接続できる「ユーティリティー接続ポート」を架台部に設計しています。エジェクターを用いた強制排気システムにより、バッグ内の換気、雰囲気制御を効果的に行うことができます。
メンテナンス時の一時的な曝露防止
乾燥機内の上部にあるバグフィルター交換時や、乾燥ケーキ製品の排出口部分にピンポイントで装着。開口メンテナンス時に発生する高活性微粉末の突発的な室内飛散・作業員への吸入曝露を防ぎます。
激しい気流と熱を伴う高速粉砕プロセスの完全隔離
高速粉砕機「NARAサンプルミル」を丸ごとバグフィット®内にパッケージング。発熱防止の冷却ジャケット配管や電気系統をバッグ外部に露出させるマウントを設計。バッグ内の気圧変化にも追従し、高度な粉砕安全対策を実現しています。
本製品は、作業エリアを局所的にカバーする「簡易封じ込め機器(簡易コンテインメント)」です。
対象となる物質のハザードレベル(OEBなど)や、個人の手技、操作テクニック、取扱手順等によって、得られる実際の曝露防止効果(漏洩量)は異なります。したがって、本製品のみの設置をもって作業者の曝露レベルの絶対値、あるいは特定の封じ込め性能を永久に100%保証するものではありません。
扱う高活性原料の種類や量、操作手順に基づき、適切な個人保護具(PPE)の併用、作業環境の局所排気設備の検討、および貴社安全衛生管理部門との適切なリスクアセスメントの実施を推奨いたします。詳細設計や安全確認については、お気軽に当社窓口までご相談ください。
簡易封じ込めバッグ「バグフィット®」は、単なる消耗品バッグの販売ではありません。
粉体プラントおよび粒子設計・エンジニアリングのプロフェッショナルである奈良機械製作所が、お客様がお使いの既存装置(他社製含む)の図面等から、最適な取り付けアタッチメントや架台を自社で設計・製作いたします。
実機製作およびバッグ納入前に、デモ用ダミーバッグを用いて「操作時に作業員のグローブがすべての対象箇所に無理なく届くか」「各種アタッチメントの脱着操作性が実用的か」を検証。事前の操作性シミュレーションにより、納品後のミスマッチを皆無にします。